インプラントは、従来法の入れ歯やブリッジとは異なり、歯茎の中にまで装置の一部が入り込んでいます。いわゆる人工歯根は、顎の骨と直接、結合しており、その状態は本物の歯と酷似しているといえるでしょう。そんなインプラントの歯根の部分にはいろいろな理由でトラブルが起こることがありますが、今回は膿んだ場合の理由と対処法について、医療法人ODCインプラント 及川歯科医院が詳しく解説します。
▼インプラント部分が膿むとは?
インプラントと膿むというのは、人工歯根の周囲で細菌感染が起こっている可能性が高いです。「膿(うみ)」は、細菌をはじめとした病原体が体内に侵入した際に生じるもので、白血球や病原性微生物の死骸などで構成されています。それがインプラント部分から出ているということは、おそらく「インプラント周囲炎」にかかっているのでしょう。インプラント手術を受けて数週間から数ヵ月しか経過していない場合は、手術中の細菌感染が疑われます。いずれにせよインプラント部分が膿んだ時点ですぐ主治医に診てもらう必要があります。
▼インプラント周囲炎とは?
インプラント周囲炎とは、インプラント特有の歯周病です。インプラントの人工歯根には歯根膜という組織が存在していないため、病原体に侵襲されやすい状態となっているのです。インプラント周囲炎の歯垢は、通常の歯周病よりも早く、顎の骨がどんどん破壊されていってしまいます。その過程でインプラント部分から膿が出ることもあります。
▼インプラント周囲炎への対処法
インプラント周囲炎への対処法は、非外科的な方法と外科的な方法の2つに分けられます。非外科的な治療方法は、通常の歯周病治療に近いです。歯周病菌の温床となる歯垢や歯石などを一掃し、その数を減らすことに努めます。それに加えてインプラント周囲炎では抗菌薬などを用いた薬物療法も行うことが多いです。
それでも改善が見られない場合は、汚染された組織などを切除し、インプラント体の表面もきれいに殺菌します。インプラント周囲炎によって破壊された骨は、歯周組織再生療法などで回復させます。ただ、進行したインプラント周囲炎は完治させることが難しいため、外科的な治療を行わずにインプラント体を取り除くことになるケースも珍しくはありません。
▼インプラントから膿が出るのを防ぐ方法
インプラント部分が膿んだ状態というのはかなり深刻です。本来はそうなる前に歯科医院で治療を受けなければなりません。もともと歯周病リスクが高い人は、インプラント治療後のメンテナンスを2~3ヵ月に1回くらいの頻度で受けるようにしましょう。それくらい高頻度にメンテナンスを受けていれば、インプラント部分が膿むようなこともなくなります。歯茎や顎から膿が出るほどインプラント周囲炎を進行させてしまうことは、絶対に避けなければなりません。毎日のセルフケアも徹底するよう努めましょう。
▼まとめ
今回は、インプラント部分が膿んだ場合の原因と対処法について、医療法人ODCインプラント 及川歯科医院が解説しました。インプラント部分が膿んだ場合は、インプラント周囲炎を始めとした細菌感染が疑われますので、早急に治療を受けましょう。インプラント周囲炎は治療によって治ることもありますが、人工歯根の撤去を余儀なくされることも珍しくありません。また、放置をするほど症状が悪くなるため、一刻も早く主治医に連絡することが大切です。