今回ののインプラント
こんにちは、及川です。
今回の患者さんは、50歳代の男性で大田原市在住の方です。
以前近くの歯科医院でインプラント治療を行いましたが、その部分のかぶせ物が頻繁に取れ
るので担当医に質問すると「仕方がない」「セメントが・・・」などといつも流されてしま
い最終的には全く話を聞いてくれなくなり、メンテナンスに行ってもそれほど確認もせずに
「経過は良いです」と言われるようになり不安という事で当院に来院されました。
お口の中で何か不具合がある場合には必ず原因があります。
お口の中を確認すると右側奥の方にだけに上下1本ずつインプラントが入っており、左側は
入れ歯という状態でしたので、噛みやすい右側メインで噛み過ぎてインプラントのかぶ
せ物が取れてしまうのと、取れる頻度が多いため適合が悪くなったのが原因だったようで
す。
この場合左右できちんと噛めるように設計しない限りこの現象は改善しません。
人は噛みやすい方だけで噛んでしまう習性があります。
また詳しく検査すると下のインプラントは出血と排膿があり、インプラント周囲炎になって
いてレントゲンで確認するとインプラント周囲の骨が吸収していて、早期に除去しないと間
もなく自分の歯の骨にまで影響が出てしまう状態になっていました。
片側(右のみまたは左のみ)のみのインプラント治療を行うと、このようにかぶせ物の脱離
や破損があったり、顔の変形、片頭痛、あご関節痛、肩こりなどが発生する可能性が出てき
ます。
インプラント治療で大切なのは左右差なく噛めるようにする設計です。
歯のない部分に対し、片側のみインプラントを行うのはやめましょう。
インプラントが長持ちするかそうではないかは、そのドクターの診査診断によって決まって
きます。
人間の歯は通常28本存在しますが、奥から2番目の歯までの再生でも十分噛む事が出来ます
ので、この患者さんには24本の再生の計画をしました。
この患者さんの場合上あご5本と下あご4本の再生で24本となりますので、患者さんと奥様
も交えて数回お話を行い同意が得られましたのでこの本数で行うことになりました。
使用するインプラント本数は少し多いケースですが、現在ある自分の歯は修理と歯周病の治
療を施し全て残し、右上の以前のインプラントもCTレントゲン(立体映像レントゲン)で確
認しかぶせ物の構造さえ変えればまだ使用できると判断しました。
使える歯やインプラントは使用し、不足している部分にのみ新しいインプラントを使用し
て出来るだけコストのことも考えてインプラント治療を患者さんに提供できればとも考えて
おります。
左右対称に歯をそろえるのが大切だとお話ししましたが、歯が無くなった部分の骨の形状が
左右同じではなく、骨をかなりの量補充しないとインプラントが出来ないケースが多くあり
ます。
適切なCTレントゲンによる診査診断を時間をかけて何パターンも考え、インプラントシュミ
レーションソフトでどのような形状長さのインプラント本体を使用し、どのような骨造成方
法(骨を増やす方法)で骨を増やすのが最も良い方法なのかをさらに分析します。
このケースでは、右上が既存骨(今あるご自身の骨)を極力利用する傾斜埋入法とリッジエ
クスパンジョン(骨に圧をかけて骨幅を増やす造骨方法)を応用して2本のインプラント本
体を埋入し、左側は1本は右と同じリッジエクスパンジョンあとの2本をサイナスリフト法(
骨の厚みが2~3ミリしかないケースに行う造骨方法)を応用して骨を増やす治療とインプ
ラントを埋めていくことを同日に行い、できるだけ早期に噛めるように治癒期間の短縮させ
る方法でインプラント治療を行うことが出来ました。
術後患者さんに、予定のインプラント治療よりも多くのことが出来た事を報告するととて
も喜んでいただけて笑顔で帰っていただけました。
今後も今以上技術向上できるよう、このコロナの渦中でも積極的にオンラインインプラント
セミナーに参加し上達できればと考えております。