虫歯は、子どもから大人まで、
▼虫歯の原因
はじめに、虫歯という病気に関わる要因から考えてみましょう。
- 細菌(ミュータンス菌)
虫歯は、口腔内に存在する細菌の特に「ミュータンス菌群」によって引き起こされます。これらの細菌は、歯の表面に付着してプラーク(歯垢)を形成し、糖を分解して酸を作り出します。この酸が歯のエナメル質を溶かし、虫歯が進行します。口腔内に存在する細菌の中でミュータンス菌の割合が高い人や、酸を出す能力の高い細菌を持っている人は虫歯のリスクが高まります。
- 体質(歯の強さと唾液の能力)
歯と唾液の質も虫歯のなりやすさに影響します。エナメル質が薄かったり、歯の再石灰化がうまく機能しないと、虫歯のリスクが高まります。また、歯並びが悪いと汚れがたまりやすく、虫歯菌の温床となることもあります。
唾液は汚れを洗い流す機能(自浄作用)や、口腔内の酸の強さを和らげる機能(緩衝作用)がありますので、唾液の分泌量が少なかったり、酸の強さを和らげる能力の低い唾液を出す人は、虫歯のリスクが高まります。
- 飲食(食生活の影響)
糖分の多い食べ物や飲み物、特に砂糖を含むお菓子やジュース(炭酸飲料や乳酸菌飲料、スポーツ飲料)は、虫歯の原因細菌の栄養になり口の中が酸性になるので虫歯になりやすい食品です。また、間食の回数が多いと口の中が常に酸性になり、虫歯のリスクが高まります。
- 時間(歯が酸にさらされる時間)
虫歯は、歯が酸にさらされる時間が長いほど進行しやすくなります。食後すぐに歯を磨かないと、口腔内が酸性の状態が続き、エナメル質が溶けやすくなります。また、夜間は唾液の分泌が減り唾液の作用である自浄作用や緩衝作用が働きにくくなるため、就寝前の歯磨きを怠ると虫歯のリスクが高まります。
▼虫歯になりやすい人の特徴
虫歯になりやすい人には、いくつか共通した特徴があります。以下の7つのポイントに当てはまる人は、虫歯リスクが高い可能性があるため注意が必要です。
- 歯磨きの習慣が不十分
歯磨きの回数が少ない、磨き残しが多い、歯間の清掃ができていない人は、虫歯になりやすいです。特に、寝る前の歯磨きを怠ると、口内細菌が繁殖しやすくなります。また、歯磨きの方法が適切でない場合、プラーク(歯垢)がしっかり除去されず、虫歯が進行する原因になります。特に汚れがたまりやすいのは①歯と歯の間②歯と歯肉の間③奥歯の溝で、これらの部位は磨き残しが多くなりやすいため、意識してブラッシングやデンタルフロス、歯間ブラシを使用することが重要です。
- 間食が多い
甘いお菓子やジュースを頻繁に摂る人は、虫歯のリスクが高まります。特に、口の中に食べ物が残る時間が長いと、歯が溶けやすくなります。さらに、粘着性の高い食品(キャラメルやグミなど)は歯に長時間残りやすく、虫歯のリスクを高めます。食事の際には、糖分が含まれる飲食物を避けるか、摂取後にすぐ歯を磨く習慣をつけることが大切です。
- 唾液の分泌が少ない
唾液には、虫歯を防ぐ自浄作用や酸を中和する働きがあります。ストレスや加齢、薬の副作用などによって唾液の分泌が減ると、虫歯になりやすくなります。特に、口呼吸の習慣がある人は、口の中が乾燥しやすく唾液の保護効果が低下するため、虫歯のリスクが高まります。水分を十分に摂取し、ガムを噛むなどして唾液の分泌を促す工夫が必要です。
- 歯並びが悪い
歯並びが悪いと、歯ブラシが届きにくい部分ができやすくなります。その結果、磨き残しによる汚れが増え、虫歯のリスクが高まります。特に、重なり合った歯や奥歯の噛み合わせが悪い場合は、汚れが溜まりやすくなります。歯列矯正を検討することで、清掃性を向上させることが可能です。
また、親知らずが生えている人は口の奥の方が清掃しにくいため磨き残しをしやすく、親知らずがまっすぐ生えてない人はさらに磨き残しが多くなりやすいです。清掃性を向上させる目的でかみ合わせに関係していない親知らずは抜歯を検討することもあります。
- フッ素を活用していない
フッ素には歯を強くする効果があります。フッ素入りの歯磨き粉や洗口剤を使用していないと、歯の再石灰化が十分に行われず、虫歯になりやすくなります。また、フッ素塗布を定期的に受けることで、歯の表面の耐酸性を高めることができます。
- 親も虫歯が多い
虫歯菌は生まれつき私たちの口腔内にいるわけではありません。虫歯菌は家族間で感染する事が多いです。特に、親に虫歯が多い場合、子供も虫歯になりやすい傾向があります。これは、虫歯の多い親の口には酸を沢山出す虫歯菌がいる可能性があり、その虫歯菌が子供に感染することで子供の虫歯が多くなりやすいです。この、親から子供への虫歯菌の感染は生後1歳~2歳半頃の歯がへ揃う頃までに、親が子どもと同じスプーンを使用するなどの行為によって起ります。
- 定期検診を受けていない
歯科検診を受けていないと、初期の虫歯を見逃しやすくなります。虫歯は初期段階で発見すれば簡単な治療で済みますが、放置すると治療が複雑になります。少なくとも半年に一度は歯科医院で検診を受け、専門的なクリーニングを行うことが推奨されます。
▼虫歯になりにくい人になるために
次の方法を実践して、虫歯になりにくい人を目指しましょう。
- 正しい歯磨きを習慣化する
フッ素入りの歯磨き粉を使用し、1日2回以上しっかりと磨くことが重要です。フッ素はエナメル質の再石灰化を促し、初期虫歯の進行を防ぐ効果があります。歯ブラシは歯茎を傷つけない程度のやわらかさのものを選び、毛先が広がる前に交換しましょう。また、デンタルフロスや歯間ブラシを使うことで、歯と歯の間の汚れを効果的に除去し、虫歯リスクを低減できます。
- 食生活を見直す
糖分の摂取を控え、バランスの取れた食事を心がけることが重要です。特に、間食の頻度を減らし、食後には水やお茶を飲むことで口腔内の酸性環境を中和できます。食事だけでなくキシリトールガムは虫歯菌の働きを抑え、唾液の分泌を促すため、虫歯予防に効果的です。また、カルシウムやリンを多く含む食品(チーズ、牛乳、小魚など)を積極的に摂取することで、歯の再石灰化を助けます。
- 唾液の分泌を促す
- 定期的に歯科検診を受ける
虫歯は初期の段階では痛みがないため、自覚症状が出たときにはすでに進行しているケースが多くあります。そのため、虫歯の早期発見・早期治療のために、少なくとも半年に一度の定期検診を受けることが推奨されます。歯科医院では、プロによるクリーニング(PMTC)で歯垢や歯石を除去し、フッ素塗布によって歯を強化することが可能です。定期的な診察を受けることで、自分では気づきにくい問題も早期に対処できます。
- 口呼吸を改善する
口呼吸をすると口腔内が乾燥し、唾液の分泌量が減少することで虫歯のリスクが高まります。鼻呼吸を意識し、口を閉じる習慣をつけることが大切です。鼻詰まりやアレルギーなどが原因で口呼吸になっている場合は、耳鼻科で適切な治療を受けることも検討しましょう。また、就寝時に口が開いてしまう人は、鼻呼吸を促すテープを使用するなどの対策を取ると効果的です。
- 子ども(乳歯~小学生)
- 妊娠・産後の方
- 高齢者の方
▼まとめ